こんにちは、目黒区議会議員の山本ひろこです。
最近ニュースでも話題になっている、東京23区の火葬問題について、皆さんご存知でしょうか? 「東京23区の民間火葬場6カ所を経営する企業が、2026年度から『区民葬儀』の取り扱いを中止すると発表し、区民は約3万円の負担増となる」という報道がされていますね。長年、この東京23区では火葬費用が高いことが問題視されてきましたが、今回の発表でさらに深刻化しています。
異常な火葬料金、その実態とは?
「高い」と言っても、一体いくらだと思いますか? 実は、東京23区の火葬料金は9万円に達しています。これは信じられない金額です。他の自治体では、八王子市が0円、横浜市が1万2千円、千葉市が6千円、埼玉市が7千円と、全国平均の約1万円と比較しても桁違いに高額であることが分かります。東京23区だと、全国平均の9倍、10倍もの費用がかかっているのです。
なぜこれほど高額なのでしょうか? それは、東京23区内の火葬場のほとんどが民間経営であるため、料金設定が自由にできるからに他なりません。実際、直近5年間で火葬料金は3万円も値上がりしています。コロナ禍前は5万9千円でしたが、コロナ禍で7万5千円に、そして2024年には8万7千2百円、現在は9万円にまで上昇しました。
この急激な値上がりの背景には、東京博善の親会社である廣済堂ホールディングスへの外国資本の参入が指摘されています。行政が価格に口出しできない状況にあるため、この価格高騰に対して何もできないのが現状です。
「区民葬儀」とは何だったのか?
「区民葬儀」とは、もともと都民葬儀として始まり、火葬費用を約3万円安く抑えることができた制度です。東京博善を利用した場合、従来の市場価格9万円に対し、区民葬儀を利用すれば5万9千6百円で利用が可能でした。しかし、東京博善がこの区民葬儀の取り扱いを2026年3月末で終了すると発表したため、業界に波紋が広がっています。
東京博善側が制度終了を決めた理由として、以下の3点が挙げられています。
- 制度の目的の形骸化: 本来、低所得者向けの支援だったにもかかわらず、申請すれば誰でも利用できるようになり、実質的に目的が失われていると彼らは主張しています。
- 特定の葬儀社しか扱えない不公平性: 区民葬儀を利用できる提携事業者が限られているため、病院と連携する事業者が区民葬儀を取り扱っていない場合、利用者がこの制度を知る機会すらないという不公平が生じていると彼らは指摘しています。
- 「火葬券」のみ利用の増加: 本来、葬儀全体(葬儀・霊柩車・火葬)のセット利用が前提だったにもかかわらず、ほとんどの利用者が火葬券しか使っていないと彼らは述べています。目黒区でもほとんどの利用者が火葬券しか使っていません。
制度終了に伴い、東京博善は火葬料金を9万円から8万7千円にわずかに値下げすると発表しています。
私の問題提起
私は、この火葬問題に対し、以下の3つの問題点と解決策を強く訴えたいと思います。
問題点1:火葬料金の異常な高騰と税金投入の是非
東京23区の火葬料金が異常に高騰していることが、根本的な問題です。区民葬儀制度の終了を受け、23区の区長会が「新たな助成制度」を検討していると発表しましたが、これは税金投入で差額を埋めることを意味し、私は本末転倒だと考えます。本来は事業者との協力で価格を下げるか、公営施設の活用を優先すべきです。
例えば、目黒区などが運営に関わる公営の臨海斎場では、区民価格で4万4千円と、民間よりはるかに安価に火葬が可能です。このような公営施設があるにもかかわらず、安易な税金投入による民間火葬費用の穴埋めは避けるべきです。
問題点2:火葬は義務!市場原理に任せるべきではない
葬儀は選択肢がある一方、火葬は法律で義務付けられた公共サービスであり、行わないという選択肢がありません。それにもかかわらず、東京23区ではほとんどが民間企業に委ねられ、価格が自由に設定されている現状は、極めて不安定で不透明な構造だと私は思います。区長会による監視機能も公衆衛生面にとどまり、価格設定への介入はできない状況です。
3つの解決策
これらの問題に対し、私は以下の3つの解決策を提案します。
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1. 東京都が火葬料金に対する補助金を出すべき
一時的な措置として、特に公営火葬場がない区に対して、東京都が補助金を出すべきだと私は主張します。これまでも東京都が民間火葬場の利用を推奨してきた経緯があるため、責任を持つべきだと考えます。
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2. 民間火葬場に対して「許認可制度」を導入し、料金設定の透明性を確保すべき
火葬は義務であるため、純粋な市場原理には任せるべきではありません。宗教的文化的背景から、遠隔地での火葬が現実には難しい特殊性も考慮し、料金設定に透明性を持たせるべきだと私は考えます。これは自由競争に任せるべき分野ではありません。
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3. 公営火葬場を持つ地域では、その活用を前提とした制度設計を行うべき
例えば、目黒区を含む城南6区には公営の火葬場(臨海斎場)があるため、まずはそちらの利用を最優先とし、安易な税金投入による穴埋めは避けるべきだと私は主張します。公営施設がない地域への補助金は、許認可制度導入までの「一時的」なものとすべきです。
この火葬問題は、誰にでも関係してくる、決して他人事ではない深刻な問題です。論点が複数あり話が拡散しがちですが、私はこの3つの解決策を軸に、皆さんと共にこの問題に取り組んでいきたいと考えています。
私たち区民が監視の目を光らせ、おかしな解決策が取られないよう、継続的なチェックが必要です。私もアップデートがあり次第、ご報告してまいります。