夏休みの学童での弁当サービスとは
今回始まる、長期休暇中のお弁当サービスは、目黒区内の全学童(保育園併設で給食出されている学童を除く)で、夏休みや冬休みなどの長期休暇中に、手作り弁当を持たせる以外の選択肢を提供するものです。
具体的には、オンラインで保護者がお弁当が事前に発注し、当日朝に学童に名前シールが貼られたお弁当が届くので、職員の先生方がそれを子ども達に配布するという仕組みです。決済もオンラインで完結するので、役所や学童で集金する必要もありません。学童ごとの最低注文数もなく、使いたい時だけ、使いたい人が使える、という非常に便利で助かる仕組みです。
学童ママの夏休みの弁当作り問題
これまで色々と実現した政策もありますが、これは5年前にゼロから手探りで学童ママさん達と始めた活動だったので、思い入れがひとしおで、今回実現してめちゃくちゃ嬉しいです・・!!!
保育園時代は毎日保育園で栄養満点の給食が出ますし、夏休みなんかも関係なく年末年始以外は預かってくれるため、本当に助かりましたが、小学校に上がると、夏休み・冬休み・春休みと、長期休暇ごとに毎日のお弁当作りが必要になります。働く親にとって、出社前のバタバタの時間の中で、支度の手伝いをしながらお弁当作りをするのはかなり負担です。
長期休暇前になると、「また毎日お弁当作りかぁ・・」というため息が、周りのママ友達から毎回聞こえてきていましたし、私も自身も仕事をしながら3人の子育てをする中で、毎朝の支度はバタバタでしたので、お弁当作りの負担は重かったです。私が体調不良の時は、コンビニのおにぎりを持たせたりすることもありました。
プール補習による安全性の問題も併発
5年前はコロナ以前でしたので、当時は、目黒区の小学校の多くで、夏休みの水泳指導がありました。なので、学童に通う子は、朝家を出て、プール補習を受けて、学童に行くという流れでした。しかし、学校の屋外プールの更衣室には冷房があるわけでもなく、ほぼ蒸し風呂状態です。そこに何時間も手作り弁当を置いておくのは、食中毒の危険性もあって、我々父母にとっては非常に気がかりな問題でした。
共働き家庭の毎朝のお弁当作りの負担に加え、こうした安全性の問題も重なって、何とかできないかと考え、担当課長に給食が提供できないかなどと相談したりしましたが、全く検討もされずでした。
そんな時、学童でお弁当サービスを実施している区があるらしいという話を聞いたのです。それが、この、シャショクラブが始めた、学童への宅配弁当サービスでした。しかも、偶然にも目黒区青葉台の会社(当時)。担当者も地元目黒区の学童ということで、非常に親身に相談に乗ってくれました。これが最初のご縁でした。
夏休みの学童保育クラブに、スマホで注文できる弁当サービスを導入
最初のハードルはめちゃくちゃ高かった
もし長期休暇中に学校で給食を調理して各学童に配送をするとすると、非常に大掛かりな話になり、多額の費用がかかりますが、このシステムだと、税金投入もゼロ、学童の職員負担も非常に少ないですし、父母会の負担も少ないわけです。
素晴らしいシステムだと思い、役所側に再度交渉したのですが、それでも簡単には受け入れてもらえませんでした。そこで、父母会として区役所の担当部署に要望書を上げました。話し合いの末、「父母会で自主的に企画するので、学童側が活動に賛同してくれたらやらせてほしい」という最低限のところで妥協してもらいました。
先の他区の事例では、学童と業者がサービス契約をしているので、父母会主体で実施する先行事例にはなりません。当時、私は学童の父母会で副会長をしていたので、ゼロベースで学童の先生方との打合せを重ね、責任分担を明確化するための確認書を交わすことで、学童側の了承を得ました。また、試行なので終了後の検証についても明記されました。
その時のタイトルが、「XX学童保育クラブにおける小学校長期体業中の保護者発注仕出し弁当受け入れ試行に係る確認書」。ややこしそうなのが伝わるでしょう(笑
全3ページに渡り、色々と条件記載の上での試行開始でした。これでも、うちの学童は区内でも非常に協力的な方で、何とか協力しようと前向きに対応してくださったおかげで、試行着手に至りました。
ちょうどその頃、シャショクラブの担当者から、目黒区の別の学童でも、父母会で宅配弁当を導入したいという声が上がっていると声がかかり、T学童のママさん達と繋がりました。
宅配弁当システムを導入したいが、どう進めて良いのかわからない、という話だったので、うちの確認書を共有して、相互に情報共有し合うようになりました。最終的に、
・お弁当サービスを導入することへの賛否アンケート
・お弁当業者選定
・お弁当サービス説明会
・お弁当試食会
など、数々の事前準備をそれぞれの父母会でやりきり、どうにかこうにか、共に弁当サービスを開始。
試行終了後は利用状況を取りまとめて報告書を作成し、学童と検証会議。ハードルが高すぎです。。
(お弁当発注画面イメージ(当時))
ついでに言うと、支払いはシステム内での決済なのですが、当時は、決済が完了しない方の支払督促を、父母会がしなくてはなりませんでしたので、サービス終了後も苦労しましたが、今はシャショクラブさんから直接督促がかかるようです。
横展開は早かった
おかげさまで、区内2つの学童で始めた初回のお弁当サービス試行は、無事完了し、好評も得ました。
ゼロからの立ち上げには苦戦しましたが、1つ成功事例ができると、横展開は早いものです。このお弁当サービスは、あっという間に区内の他の学童の父母にも知れ渡るところとなり、同様の手法で、区内のあちこちの学童父母会でも実施されるようになっていきました。
もちろん、それぞれの父母会が自由に選定するので、全部が全部シャショクラブさんではなく、色々な業者さんを利用されています。
ただしかし、父母会でお弁当サービスを続けるには、この活動を担当する係が毎年必要です。父母会の役員は毎年変わりますが、毎年の役員決めは非常に困難を極めています。両親共働きの学童保育クラブの父母が、プラスアルファの負担をするのは、結構な覚悟と時間の工面が必要です。そもそも最近は父母会の加入率がどんどん下がっており、年々父母会が縮小していく中で、この活動を父母会だけで続けるのは困難な地域が出てきました。
議員復帰と議会提言
お弁当サービスを立ち上げた翌年、私は区議を辞職して区長選挙に挑戦し、落選。政治の世界を離れていました。その後3年を経て再度区議会議員に復帰し、地域の方々と話をしていく中で、
「何とか、このお弁当活動を、後の世代に残せないか」
と声を上げてくれたのは、当初この活動を共に立ち上げたママ友でした。彼女の後押しをキッカケに、ネットで賛同者を募り、「学童弁当サミット」と名付けた会議も行い、皆の声を元に、議会で提言しました。
一度始めてしまえば、それほど業務負担は多く無いのですが、毎年の役員交代で、担当者は常に「初担当」になってしまうため、毎年引き継ぎが発生します。これにより、かなり負担が大きくなってしまうので、役所が運用を担ってくれれば、毎年の引き継ぎ問題も発生せず、後継者探しも不要で、安定して運用ができるため、非常に効率的になるのです。
我々の試行から4年、既に近隣自治体では、渋谷区も世田谷区も品川区も、学童のお弁当サービスを区で全面導入していました。「近隣区の多くが始めたら、何となく目黒区でも始める」、というのが目黒区の定番スタンスですから、さすがにもう導入に踏み切ってもらえるのではないかと思い、議会内外で交渉しましたが、判を押したような同じ回答の繰り返しで、全く受け入れてもらえずでした。
既に区内15ヶ所もの父母会で試行はできていましたし、既に4年以上も「試行」を続けていても、大きなトラブルもありませんでした。役所側も学童側も、ほとんど手間がかからないし、税金負担も無いということも、導入担当者として実体験を元に説明していましたが、役所側は机上の空論で「利用率は高く無い」「アレルギー対応が必要」「それでも負担はある」等々、やらない理由を並べてばかりでした。
議会提言時の経緯はこちらです。
急転直下の、目黒区での全面導入開始
どうしたことか、課長が変わったからなのか、今までの否定理由は全て突然「些細な課題」となり、「それをもってこのサービスをやらないという理由にはならない」ということで、令和6年の夏休みから、目黒区の全学童保育クラブへの一斉導入が決まりました。
全くもって理解に苦しみますが、ともあれ、区での全面導入が実現したことは大変嬉しいことです。突然の発表なので、既に夏休みに向けて業者と契約されている学童父母会もあるでしょうから、それはそのまま続けられて構わないとのことです。併用になるだけで、父母会の自主活動を排除するものではありません。
そもそも、お弁当サービスが父母会で実施できていない学童もある中で、今後はどの学童でもシャショクラブの弁当サービスが選べる、という選択肢が増えたということです。もちろん、手作りできる家庭は、ぜひ手作りしてあげてください。
全員が宅配弁当に切り替わるわけではなく、使いたい時だけ、使いたい人が使えるお弁当サービスというのは、各家庭の方針を尊重しつつ、利便性も高い、素晴らしい仕組みだと私は思っているので、実現されて本当に嬉しいです。
ご協力いただいた父母会の皆様、学童の先生方、本当にありがとうございました!!!
今回の全面導入の試行の次は、以前の議会提言でもお伝えしたように、らんらん広場にも容易に提供可能なはず(学童と同じ受託業者)ですから、拡大してもらえるよう、要望しておきます!
地域の自主活動から区政を変える
今回、学童父母の昼食サービスがあったらいいのにというニーズに対し、私たちはまず父母会で自主的にサービスを構築し、導入し、継続してきました。役所がすぐ動いてくれないという側面もありますが、「こんなのあったらいいのに」というサービスは限りなくある中で、役所がサービス提供してくれるのを待つだけではなく、無いものはで自分たちで作るという姿勢は、結果的に非常に大切だと思います。
役所にサービスを求める時には、「もっと高品質なものを、もっと丁寧な対応を、でも価格は安く」、、、など、求める水準も高くなりがちですが、自分たちで実施するには、「最小限の労力で、できるだけ美味しく安全なものを、できるだけ安く」と工夫と妥協をするところから始まりますので、そもそもの視点が異なります。こうした視点で導入された仕組みは、非常に効率的で税負担も少なくなります。
もちろん今回の活動も、私が区議でなければ、ゼロベースで役所と交渉して進めるというのは困難だったと思いますが、起点は父母会の自主活動です。少子高齢化で財源も限られる中で、地域住民との協働がなければ、今後の自治体経営は成り立たないと考えますので、持続可能な区政サービスにしていくためにも、より一層、地域活動の活性化を推奨していきたいと思います。
(追記)一緒にお弁当サービスの自主活動を始めたママ友さんとの対談動画も作成しました!
https://youtu.be/1FgazQgW2yI