国際公会計学会発表「負債が無くなった後はどこを目指すのか」

郊外の自治体の財政状況

最近、安芸高田市、彦根市など、Youtubeにアップした財政説明会が多くの人に視聴されています。

郊外の自治体では、激しい人口減少により、財政状況も危機的な状況を迎えつつあり、公共施設の統廃合のみならず、コンパクトシティ化も避けられません。公共施設の「充実」を望むどころか、「現状維持」ができず、どんどん削減していかねばならないという財政上の現実を、住民に理解してもらおうというものです。

しかしながら、自治体によって財政状況は全く異なります。

 

先進的な目黒区の区有施設見直し方針

都心の目黒区では、人口減少は40年以上先で、子どもの数も減らないため、本来であれば公共施設を削減する動機に欠けるところです。

しかしながら、目黒区は平成24年(2012年)の時点で、既に施設白書を作成し、更には平成25年(2013年)に、目黒区区有施設見直し 有識者会議による、「目黒区区有施設見直しに関する意見書」を提出してもらっています。この有識者会議の委員長が、東洋大学公民連携学専攻長の根本祐二教授だったからこそ、各公共施設の利用1件あたりのコストも算出するなど、緻密な数値分析をした上で、施設更新による将来の財政負担を見据えた取捨選択の指針が提示されたのだと思います。

この意見書をベースに平成26年(2014年)には「目黒区区有施設見直し方針」が策定され、「ハコモノ3原則」を基本とする方針が明示されました。具体的には、

原則1)新しい施設の整備は、原則、行わない。

原則2)施設の更新(大規模改修、建て替え)は事前調整のうえ、原則、多機能化・集約化、複合化した施設とする。

原則3)今後40年間で区有施設の総量(総延床面積:52.2万㎡)の15%(7.8万㎡)の縮減を目指す。

というものです。

こういうビジョンを10年以上前の時点で策定できたのは、素晴らしい先進事例だったのですが、残念なことに実践の歩みは遅く、最近になってようやく具体的な計画が進みつつあります。

 

目黒区の財政状況と課題

全国の自治体と比較すると、東京23区は非常に豊かです。実質公債比率もマイナス。経常収支比率も70%台と弾力性がある。貯金が借金を上回っており、毎年の税収も伸び続け、危機感も感じにくい。そんな中で、公会計で何を伝えていくべきかを、既に1年以上前ですが国際公会計学会で発表したので、その時の報告文を共有します。

【2023年度全国大会統一論題】市民の意思決定のために公会計が果たすべき役割

「負債がなくなった後は、どこを目指すのか」〜都心自治体における政治現場からの見解〜

(↑このリンクから報告文にアクセスできます)

 

「負債が無くなった後はどこを目指すのか」発表資料